【 製版・プリントを学ぶ - その3 - 】

次にお伺いしたのは、印刷工場「株式会社 捺染工房」さん。


製版屋さん(前回ご紹介した藤工芸さんのような)から納品された版を使って、図案に応じたインク色を調合して、印刷します。ちなみに大昔は、メッシュ部分にシルク(=絹糸)が使われていたため「シルクスクリーン印刷」と呼ぶそうです。


 ◎シルクスクリーン印刷工程


初回の記事では、⑤見本用インク調合→ ⑥見本プリント→ ⑦版洗浄→ ⑧生産用インクの生産→ ⑨製品プリント→ ⑩版洗浄 と分類したのですが、さらに細かく工程をご紹介したいと思います。


まず、はじめに「生地カット」という工程があります。 タオルはほとんどの場合、耳巻き(=タオル長辺の端っこの縫製)は処理された状態で、ヘム(=タオル短辺の端っこの縫製)は未処理、つまり、開いたままの状態で印刷工場へ納品されます。

ここでまた少し余談になるのですが……
とてもとてもこだわったタオルを作る場合、まれに耳巻きをしないで、開いたままの状態で納品します。これは大変コスト高になるため、あまりやりません。
耳を巻かないで印刷した場合、なぜコスト高になるかというと、一般的にタオルは、細長〜〜〜〜くタテに繋がった状態で織り上げられ、繋がった状態のまま、複数枚分のタオルの耳を一気に巻き上げます。それを一枚ごとに切り離してから、印刷屋さんに納品するのですが、耳を巻かないでカットすると、プリントが完成した後、耳を一枚一枚巻いていかなければなりません。こうした手間がかかるので、コスト高になるということです。

ただ、耳をひらいた状態で印刷をすると、耳の内側まできれいに柄が入り込むため、見た目のクオリティは断然上がります。そしてそんなこだわりを持ってつくったタオルが「drawing」です!

……以上、長い余談でした!


さて、次はもっとも大事な工程とされる「インクの調合(=色合わせ)」です。


タオルメーカーやわたしたちのようなデザイナーが指定した色番号と、できるだけ違いの無い色を作っていただくのですが、これは本当に経験が問われる作業なのだそうです。
サンプルを作ってチェックし、OKが出た時点で調色のレシピを確定させれば、その後はレシピ通りに配合することで、ほぼ同じ色が何度でも作れるそうです。
また、色の劣化や変色などがあるため、作りおきはせず、発注ごとに必要量のみ作るそうです。


次は版のセットです。

1色ずつずれないように版をセットし、ベルトコンベア状のオートスクリーン台にも糊を付け、そちらにはタオルをセットします。 セットする直前に、エアーの噴出する隙間にタオルを吸わせ、汚れをしっかり落としておきます。(映像参照)

準備が整ったら、オートスクリーン機に調色したインクをモタモタっと乗せて、テスト印刷をします。
スキージ(=ヘラ)でインクが伸ばされ、インクが途切れない様に補充しつつ、ムラやズレがないかをチェックします。このスキージは分厚いゴムでできていて、図案や版の目の細かさなどによって厚みや角度を調整するそうです。長く使うとゴム部分は劣化してくるので、定期的なメンテナンスが必要です。

ちなみにこのスキージは大変高価なものだそうで、主に京都でつくられているのだとか。京都の伝統工芸品のひとつである「京友禅」の手捺染が発祥になっているとのことでした。ゴム先の角度や角の丸みなど、とても微妙な違いが仕上がりに大きな影響を与えるそうです。

テスト印刷で、図案のズレや発色などをチェックし、問題がなければ、本番の印刷に入ります。 1版目を刷り終えたら2版、3版とベルトコンベアで運ばれ、それぞれ分割されていた色がピッタリ合致していく様子は、見ていてとても気持ちが良い!


刷り上げられたタオルは、乾燥機の中をゆっくり通過させます。 この工程で、インクの定着と乾燥が行われます。乾燥後には蒸し処理と洗い加工、そしてふたたび乾燥機で乾かされ、いよいよ完成します。 


なお、インクには「顔料」と「染料」がありますが、染料プリントの方が、印刷の耐久性が良いこと、生地が固くならないこと、吸水性が落ちないこと、という特徴があるため、伊織のプリントタオルはほぼ全て染料プリントを採用しています。 それによって、厳しい今治タオル試験にも合格するタオルに仕上がっています。 


ものづくりにかぎらず、いろんなこと、たとえば料理やスポーツでも言えると思うのですが、構造やしくみを体系的に学ぶと、発想力がメキメキと育つように感じます。
できること/できないことを把握することで、より具体的な想像が可能になります。
また、できないとされていることについても「もしかして、こうしたらできるんじゃないか?」と追求してみたくなったりします。

わたし自身、たくさんのひらめきやアイデアを拾ってきた実感があるので、それはいつか商品として形にしたいと思っています。  

今回、製版屋さんと印刷屋さんをいっぺんに見学させていただけたのは大変貴重な機会でした。 お忙しいなか、見学させてくださった両社と、ご紹介くださったタオルメーカーさんに心から感謝いたします。

それにしても、どの現場にも、使い込まれて味がくったりと染み込んだ道具が無造作に積まれていて、どこを撮ってもフォトジェニック!ここで全ての写真をキャプション付きでご紹介したい気持ちでいっぱいなのですが、控えておくことにします......。


松浦

タオルとくらす研究室

「タオルからはじまる、豊かなくらし。」をコンセプトに、全国23店舗を展開しているタオル専門店「伊織」は、日々のくらしに寄り添うタオルについて、より学び、考え、新たな可能性を発信することを目的とした「タオルとくらす研究室」を開設しました。 「タオルのはなしは 暮らしのはなし」をテーマに、世界の繊維や織物をヒントにしながら、暮らしにまつわる新たな提案を生み出す活動をしています。